骨粗しょう症

大腿骨頚部骨折、腰椎圧迫骨折は高齢者の寝たきり原因の第2位であり一度骨折すると二回目、三回目と骨折が連鎖し健康寿命を大きく損なうことになります。
特に女性は閉経後、年齢とともに骨密度が急速に低下し自覚症状がないまま骨折しやすく背中も曲がりやすい状態になっていきます。
最近耳にしたことがあるかもしれませんが、「いつの間にか骨折」といい、転んでもないのに知らないうちに背骨が潰れ背中や腰が曲がり見た目の問題かでけでなく歩行に支障が出てしまうこともあります。


当院では骨粗しょう症診療ガイドラインに沿って早期に骨粗鬆症の診断を行い適切な治療を行います。

骨粗しょう症とは

骨粗しょう症とは、加齢やミネラル不足、運動不足、喫煙、飲酒、閉経による女性ホルモンの減少、ある種の薬などの影響で骨の量が減少しスカスカしてしまう状態です。いつの間にか骨折のように気づかないうちに背筋が悪くなったり、転倒により骨折したり、膝のO脚が急速に進行したりします。手術が必要な大腿骨頸部骨折(太ももの根本です)を起こしてしまうと手術、入院が必要になり生活の質低下が避けられません。

骨粗しょう症の予防と治療


骨粗しょう症は、女性ホルモンの分泌が低下する更年期以降に特に多く見られます。女性ホルモンには、骨の新陳代謝に際して骨の吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。閉経後は骨の吸収が速まるため、骨の形成が追いつかず、骨がもろくなってしまうのです。
閉経を迎える50歳前後から骨量は急激に減少し始めますので、その頃に一度骨密度検査を受けることがよろしいかと思います。当院ではDXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)を用い最新の骨密度測定装置を使用し骨密度を測定します。

骨粗しょう症の発症には、遺伝や加齢、閉経以外にも食事・運動習慣などが大きく関与しています。そのため食事・運動療法も骨粗しょう症の予防と改善には欠かせません。当院でも薬物療法だけでなく必ず運動習慣をつけてもらうよう指導しておりますが、骨粗しょう症との診断を受けたなら、治療の中心は薬物療法となります。

食事療法

骨粗鬆症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、および骨の代謝に必要なビタミンD・Kなどです。
カルシウムは700~800mg/日、ビタミンDは400~800IU/日、ビタミンKは250~300μg/日を摂取することが勧められています。これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスの良い食生活を送ることが大切です。

バランスの良い食事とは具体的にどのようなものでしょうか?

ポイントはエネルギー及び栄養バランスの取れた食事の基本は、主食・主菜・副菜を揃えることです。

  • 主食:ご飯、パン、麺類など、主にエネルギー源になる料理。
  • 主菜:肉、魚、卵、大豆製品などを使った、主にタンパク質を多く含む料理。
  • 副菜:野菜、きのこ、海藻などを使った、ビタミン・ミネラル・食物繊維を多く含む料理。

食べ過ぎたもの、食べなかったものを次の食事、翌日の食事で調整することを意識するのもお勧めです。


また、カフェイン、アルコールなどの摂り過ぎには注意しましょう。アルコールは、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりします。カフェインもまた、カルシウムの排泄を促します。

運動療法

骨は、運動をして負荷をかけることで増え、丈夫になります。逆に寝たきり、骨折によるギプス固定などで負荷をかけないと骨萎縮が起きて弱くなってしまいます。

筋肉を鍛えることで体をしっかり支えられるようになったり、バランス感覚が良くなったりし、ふらつきが無くなって転倒防止にもつながるため、運動療法は骨粗鬆症の治療に不可決です。
骨量を増やすには、ウォーキングやエアロビクスなどの中程度の強度の運動が効果的です。ウォーキングに加えてスクワットなどの筋力不可訓練を行うことで筋肉量の維持ができます。加齢による筋肉量の減少については多くの研究者から報告があり、それらによると、だいたい20歳頃と比較して、60歳では上肢で約15%、下肢で30%程度、筋肉量が低下しています。

薬物療法

当院では感覚的に投薬するのではなく最新の骨粗鬆症予防と治療にガイドラインに従って薬物療法を開始します。せぼねの圧迫骨折を生じていれば骨密度が高いのに治療を勧められているのはガイドラインに従っているからです。

せぼねの骨折は70歳代前半の25%、80歳以上では43%に生じています。しかも70歳以降では約半数以上が複数個の骨折を生じています。(骨折の連鎖)


現在、使われている薬には、骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」、骨の形成(新しい骨を作る)を助ける「骨形成促進剤」、骨の栄養素である各種ビタミン(D、K)剤などがあります。また、腰や背中などに痛みがある場合は、運動療法の他に痛みを取る薬も用いられます。どんな薬を選び、いつから治療を始めるかについては、年齢や症状の進み具合、骨折リスクの評価などを考え合わせながら判断します。


現在治療に用いられている薬には、主に以下のようなものがあります。

 ビスフォスフォネート

骨吸収を抑制することによって骨形成を促し、骨密度を増やします。骨粗鬆症の治療薬のなかでも有効性の高い薬です。

 活性型ビタミンD3

カルシウムの腸管からの吸収を増やす働きがあります。また、骨形成と骨吸収のバランスも調整します。

転倒抑制効果も報告されており、筋骨格系に対する作用があるとされ、体幹の揺れや転倒の減少が示されています。

 ビタミンK2

骨形成を促進する作用があり、骨折の予防効果が認められています。

カルシトニン

骨粗鬆症に起因する背部痛などに有効。週に一回の筋注製剤です。

 女性ホルモン製剤(エストロゲン)

女性ホルモンの減少に起因する骨粗鬆症に有効です。閉経期のさまざまな更年期症状を軽くし、併せて骨粗鬆症を治療する目的で用いられます。

 SERM(塩酸ラロキシフェン)

女性ホルモンと似た働きをし、骨吸収を抑制することで骨の量を増やします。

 副甲状腺ホルモン(テリパラチド)

骨形成を促進する薬で週1回の皮下注射もしくは、1日1回の自己注射のタイプがあります。最も短時間で骨を形成することができ、骨密度が非常に低い患者さんに適した薬です。

抗RANKL抗体(デノスマブ)

半年に一回の皮下注射をおこないます。カルシウムとビタミンDの内服を併用します。

抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)

1ヶ月に1回の皮下投与を12ヶ月行います。2019年3月に発売された薬で骨形成促進と骨吸収抑制という2つの作用を持つ特徴があります。

*骨形成促進作用のあるテリパラチドやロモソズマブは最後の切り札ではなく、骨折の危険性の高い骨粗鬆症に対しては最初に使用し、その後は抗RANKL抗体やビスフォスフォネートで高めた骨密度を維持することが良いです。

*骨形成促進作用のある薬は高価でしたが、(効果も高いですが(^^)、、)近年バイオシミラーが発売され医療費を抑えて使用することができるようになってきました。

*骨粗鬆症治療を行っていても骨密度の数字が上がらないこともありますが、低下するスピードを抑えると考えていただいたほうがよろしいかと思います。

*当院が掲げている「スポーツ整形」は学生などのスポーツ選手だけでなく、骨粗鬆症治療の対象となる年代でも運動習慣をつけてもらい健康寿命を延伸させたいという考えですので投薬中はしっかり体を動かすことを心がけていただきたいと思っています