people doing marathon

整形外科専門医であれば運動器すべての外傷や障害を取り扱い、診断とリハビリを含めた治療を行います。

ではスポーツ整形とは何でしょうか?スポーツ選手の外傷、障害を診ることなのかもしれませんが、一般の方にも生じる疾患もあり、特別に診断方法、治療が異なるわけではありません。

その中で、スポーツ整形診療の役割は慢性的な使いすぎ(オーバーユース)によって生じる障害を事前に予防する事と、起きてしまった障害、外傷に対しては医師、リハビリスタッフ、アスレティックトレーナーなどが総員で適切な時期の競技復帰を目指すことであると考えています。

スポーツ整形診療ではすぐに手術が必要になることはほとんどなく、なぜ障害を生じたかを的確に判断し、それに対処するための運動療法でほとんどが治療可能です。

具体的には成長期には柔軟性が欠如しているアスリートが多く、過度なストレスが成長軟骨や筋腱停止部にかかっています。高齢になると関節自体の固さ、変形が出てきますので、世代に関係なく適切なストレッチの指導に重点がおかれます。(高齢の方のウォーキング習慣もスポーツ活動です。)

そのため当院では、電気やマッサージではなく、動的ストレッチマシンの導入、アスレチックリハエリアの確保などを行いました。個々のスポーツパフォーマンスを最大限出すために身体の状態、競技特性などを考慮し、スタッフが必要なトレーニングプログラムを作成し、競技復帰をサポートします。

また、シンスプリント、野球肘、各疲労骨折、腰椎分離症などMRIが必要な疾患が多いのもスポーツ整形外科の特徴です。当院では基幹病院同等の1.5テスラMRIを完備しましたので、外注することなくスムースな診療ができると考えています。

また、スポーツ活動は世代を超えて行われており、決して学生や社会人選手だけが対象ではありません。週に一回のテニススクール、週末のゴルフやランニング、高齢になってからのウォーキングもすべてスポーツ活動です。運動習慣がなく転倒予防、ロコモティブシンドロームの予防など健康を維持したい患者様にも、スポーツ整形の視点でメディカルリハビリテーションプログラムを作成します。

整形外科で扱う疾患とスポーツ医としての診療としての役割は以下です。

・スポーツ障害

投球障害肩、野球肘、ジャンパー膝などのスポーツ障害に対して理学療法士と共に診断、治療を行います。一定の繰り返し動作により生じることが多く、体の硬さ、身体全体の機能や投球動作、ランニングフォームなどが影響します。そのため運動療法が中心になり競技復帰を目指しますが、初診時に病状が進行している場合はスポーツ休止期間を要したり、まれに手術が必要になる障害もあります。

野球肘はエコーでも十分な診断ができますが、シンスプリント(すねの痛み)、野球肩、腰椎分離症の早期診断にはMRIが非常に有効です。特に腰椎分離症は成長期スポーツ障害の代表的疾患であり、診断の遅れにより治療のタイミングを逃してしまうこともあります。腰椎分離症の病態は、反復するストレスによる「疲労骨折」です。レントゲンではっきりと分かる状態は疲労骨折が治癒するタイミングの逃した終末期であり、残念ながら癒合は望めませんので、リハビリで柔軟性の獲得や分離部ブロック注射などで症状の緩和を図ります。レントゲンでは問題がなくてもMRIで早期の疲労骨折が発見できた場合は、装具療法により骨癒合を目指します。その場合でも十分なストレッチは重要ですし、コルセットも患者様の学年、スポーツ種目それぞれに合わせて処方します。

・スポーツ外傷

前十字靭帯損傷や肩関節脱臼、足関節靭帯損傷などはアクシデントによって生じるのがスポーツ外傷です。アクシデントといえどもできる限りの予防を講じるべきですが、受傷した場合には手術治療が必要になることも多いです。現在は多くのスポーツ外傷は関節鏡(内視鏡カメラ)を用いた最小侵襲手術が可能となり、術後早期のリハビリテーションとスポーツ復帰が可能になりました。前十字靭帯損傷、半月板損傷、足関節靭帯損傷などの手術適応は、それぞれの専門医に紹介させていただきます。肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼などで手術が必要になった場合は責任を持って連携病院にて手術治療させていただきます。手術適応とならず保存加療を継続できる場合には、理学療法士とともにスポーツ整形外科医として競技復帰へサポートします。

・スポーツ障害の予防

スポーツ障害は未然に防ぐことが重要でありアスリート本人だけでなく保護者、指導者への障害予防の教育、障害早期の発見が重要と考えます。私は獨協医科大学埼玉医療センター整形外科所属時代より越谷市内のリトルリーグチームを対象としたエコー(超音波)を用いた野球肘検診を行ってきました。2020年には埼玉県の各地域で独自に行なってきた野球肘検診などを統括し、組織的にスポーツ障害を予防するために設立された「NPO法人 埼玉スポーツメディカルサポート」の立ち上げメンバーとして、越谷市内だけでなく埼玉県のアスリートに対して障害予防の活動を行っています。

障がい者スポーツ

公益財団法人日本障がい者スポーツ協会公認の障がい者スポーツ医でもあります。

スポーツは障がい、年齢、性別などによって区別されるものではありません。障がいの種類や程度、ライフステージに応じて日常的に生涯スポーツを楽しめるように全力でサポートします。対麻痺の方の上肢の機能、特に肩関節はスポーツ活動だけでなく日常生活動作に非常に重要な機能を持ちます。大学病院をはじめ各施設で肩関節外来を担当してきた立場から適切なアドバイス、治療を提案させて頂きます。