エコー下ブロック

整形外科医になった2000年当時と比べ、診療の大きな変化の一つは運動器エコーの普及です。エコー下での関節注射、ハイドロリリースや神経ブロックなどで診療の幅が広がっており、現在の整形外科診療にはエコーは欠かせません。

当院では関節内注射の多くはエコーガイド下に行います。1000例以上の肩関節鏡手術を経験しておりますが肩関節への関節内注射は実は非常に難しい場合が多く、容易であるとすれば大きな腱板断裂で水腫を伴う状態に限られます。肩関節を例にとってもインピンジメント症候群、腱板断裂に対する肩峰下滑液包への注射、凍結肩(一般的に言うところの五十肩)、変形性関節症、関節リウマチによる滑膜炎などに対する関節包内への注射、変形性肩鎖関節症に対する肩鎖関節への注射、上腕二頭筋長頭腱炎に対する結節間溝への注射、様々な痛みに対する肩甲上神経ブロック、烏口肩峰靭帯周辺のハイドロリリース、四辺形間隙症候群(quadrilateral space syndrome:QLS)による腋窩神経障害に対するハイドロリリースなど様々な部位があります。

どの部位に注射するのか、注射する薬剤としてもヒアルロン酸、ステロイド、ハイドロリリースを目的にした生理食塩水などがあり、何を用いるのか、それらを専門的な診断のもとに最低回数、エコーガイド下に注射しています。

比較的即効性がある肩の痛みに対する注射は
・腱板断裂、インピンジメント症候群に対するブロック
・石灰沈着性腱炎に対するブロック needling手技により切開に針穴を開けることで切開の流出を促すことや、石灰の性状により部分的に抜き取れる場合もあります。
・安静時の痛み、夜間就寝時などの痛みが強い凍結肩(一般的に言うところの五十肩)に対するブロック
・部分的な動きの制限(特に外開き)に対する烏口肩峰靭帯周辺のハイドロリリース
・初期の変形性関節症や関節リウマチに対するヒアルロン酸などの関節注射

などです。
他に腰の痛みに対する椎間関節ブロックや腱鞘炎などに対するブロックもエコー下に行っています。

運動器疾患の治療の基本は痛みの原因となっている負担を取り除き、ストレッチや機能回復訓練などのリハビリです。
ブロック注射を行う場合は基本的にエコーを用いて安全に行い、なるべく少ない回数で行うことを心がけています。

ペインクリニック外来で行うブロック

ペインクリニックとは「痛み」を総合的に診断・治療する診療科です。痛みは長引くと更に新たな痛みを引き起こし「痛みの悪循環」を生じてしまい治療に難渋します。そのため、初期に痛みの原因を診断し取り除くことが重要ですが、慢性化した痛みには薬物療法の他、神経ブロックが有効な場合があります。

当院は運動器疾患を専門に扱うクリニックですので、整形外科専門医として院長が患者様全員の主治医となり、皆様の診断と治療に当たります。痛みはつらい症状ですが、まずしっかりとした診断を行い、リハビリや生活指導を行うべきで無用なブロック注射は避けるべきと考えています。

それでも必要な場合は運動器で扱う神経ブロック、関節注射、ハイドロリリースなどは院長が担当できますが、その中でも腰の痛みや下肢のしびれに対する硬膜外ブロック、仙骨裂孔ブロックなどは副院長のほうが長けている分野ですので、ペインクリニック外来として副院長が併診して治療にあたります。

ペインクリニック外来で取り扱う主な疾患

腰部脊柱管狭窄症
変形性腰椎症
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎分離症
腰椎変性すべり症

などの腰痛、坐骨神経痛に対してブロックを行います。

腰部硬膜外ブロック 仙骨部硬膜外ブロック

腰痛や坐骨神経痛、間欠性跛行(歩いているとお尻から足が痛くなったりしびれたりして長く歩けない。)などの症状に対して行います。

硬膜外ブロックは神経を包んでいる硬膜の外側のスペースに局所麻酔薬を注入することで神経に麻酔がかかり、痛みの感覚を脳に伝達する働きを遮断します。ただ痛みを遮断するだけでなく、長期間の痛みによる異常な神経の興奮状態を沈めることを目的にしています。また、自律神経も麻酔薬によりブロックされるため血管が拡張し血液の流れが良くなります。運動神経の異常な興奮状態も治まりますので、筋緊張が和らぎ筋肉由来の痛みも緩和します。

神経の通り道がどの部位で、どの程度狭いかをMRIで把握し、どの部位の腰部硬膜外ブロックを行うのかを判断しますが、全体的に狭い場合は仙骨部硬膜外ブロックを行います。

ワーファリンなどの血液を止める力を弱くする薬を使用している場合は神経ブロックは行なえません。

腰痛のみでその痛みが背骨の関節(椎間関節)に由来する状態には、神経ブロックよりも椎間関節ブロックの方が除痛効果が高い場合がありますので、どのブロックをどの場所に行うかは整形外科専門医の視点で院長が判断します。ペインブロック外来は院長からの紹介による完全予約制です。希望される方は院長の診察時にお申し出いただくか、問診票にご記入ください。

当院では関節の痛み、腰の痛み、手足のしびれなど運動器に特化した診療を行いますので、帯状疱疹やがん性疼痛に対するペインクリニック業務は扱っておりません。あしからずご了承くださいませ。